住生活の領域に特化した日本最大級のソーシャルプラットフォーム「RoomClip」を運営するルームクリップ株式会社は、投稿写真や検索キーワードなどのデータを基に住まいや暮らしについて調査・研究をする「RoomClip住文化研究所」より、「ヌック」に関する投稿・検索データと実際の投稿の分析をまとめたレポートを発表しました。
家づくりにおいて「こぢんまりした居心地の良い空間」を指す「ヌック」が近年注目を集めています。その背景にはコロナ禍で変容した住まいの在り方と、それに伴い生じた生活者のニーズが大きく影響しています。
今回のレポートではRoomClipの投稿実例やデータを交えながら、ヌックの人気の背景やそれに伴い見えてきた、新しい「住まいの共有スペース」について解説しています。
1.家づくりにおいてヌックが注目を集めており、RoomClipにおける投稿水準は2019年と比較して23.36倍、検索水準は22.6倍になっている
2.ヌックの人気には、コロナ禍で家の中における「時間」「やること」「同時に過ごす人の人数」が増えたことが大きく関係している
3.「同時に過ごす人の人数」が増えたことで「家族と過ごす時間と1人で過ごす時間を両立できる空間が欲しい」というニーズが生まれた
4.「家族と過ごす時間と1人で過ごす時間を両立できる空間が欲しい」というニーズの顕在化によって、リビングはゆるやかに閉ざされ、個室はゆるやかに開かれた
5.ヌックや室内窓の人気は生活者の「共有に対する意識の変化」の現れである
レーポートの全文はこちら▶︎https://lab.roomclip.jp/contents/nook/
ヌックとは家づくりにおいて「こぢんまりした居心地の良い空間」を指しています。その由来は「アングル・ヌック」からきています。ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典では下記のように説明されています。
RoomClipではさまざまな形や目的を持ったヌックが投稿されています。
以下のデータは、Googleトレンドによる「ヌック」というキーワードが検索された推移のグラフです。
全体として右肩上がりのアップトレンドであることが分かります。
RoomClipのデータを参照しても、やはりヌックへの関心度が高まっていることがわかります。投稿、検索、どちらの水準においてもこの5年で20倍以上となっており、その関心の高さが伺えます。
コロナ禍においての住まいの在り方の変化について、住文化研究所は家の中における「時間」「やること」「同時に過ごす人の人数」が増えたことが大きく関係していると分析しています。
コロナ禍を経て家族との時間がどう変化し、それに対して生活者がどう感じたかの資料を見てみます。
上図は内閣府が令和5年4月に発表した「第6回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」の「家族と過ごす時間の変化」についてのデータです。2020年の5-6月においては、70.3%の人が「感染拡大前と比較して家族と過ごす時間が増えた」と回答しています。
また「現在の家族と過ごす時間を保ちたい」という声は93%に上り、生活者がコロナ禍によって増えた「家族と過ごす時間」を歓迎し、それを保ちたいという気持ちが高まっていることがわかります。
RoomClipの投稿においても「家族の時間」に関連する投稿は427.76倍にも上昇し、家族との時間に対する前向きなコメントが多く投稿されています。
一方で、「1人で過ごす時間があったらいいな」というニーズも増加しています。RoomClipの投稿においても「自分時間」や「パーソナル」といった1人で過ごす時間に関係する投稿が増えています。
このように、コロナ禍によって住まいの在り方が変化するなか、「家族と過ごす時間があったらいいな」と「1人で過ごす時間があったらいいな」という相反する2つのニーズが生まれました。その結果、「それらのどちらも両立できる空間が欲しい」という、これまで多くの人は意識していなかったであろう新たなニーズが顕在化してきました。
これまでのリビングは家族と共に過ごすために、仕切りのない「開かれた空間」であることが大前提で、そこに「1人の時間」が入り込む余地はありませんでした。
しかし、「家族と過ごす時間と1人で過ごす時間を両立できる空間が欲しい」というニーズの顕在化によって、リビングの「仕切りのない開かれた空間」という在り方が見直されはじめました。その結果、人気を集めることになったのが「ヌック」です。ヌックはリビングという開かれた空間をゆるやかに閉ざす役目を果たし、そこに「1人の時間」が入り込む余地をつくりだしました。また、この現象は個人の部屋や寝室といった個室、つまり1人で過ごすための「閉ざされた空間」でも同様に起こっています。
近年、家の中で部屋と部屋の間に設置する窓である「室内窓」がヌックと同様に注目を集めています。
室内窓は個室という「閉ざされた空間」をゆるやかに開く役目を果たし、そこに家族の気配を取り入れることを可能にしました。
RoomClipに投稿されている室内窓。
戦後、住まいの中での「家族団らん」の場として普及したリビングは、今でも家族が共に過ごす場としてとても重要視される空間です。一方で、生活者が住まいという限られた空間の中で、誰と何をどのように共有したいのかは時代とともに変化するもので、その変化は2010年代以降のSNSの普及と共にそのスピードを早めています。
今回テーマとして取り上げた「ヌック」はその変化の中で発生した新しい「共有」の在り方を示すひとつのピースに過ぎません。
住文化研究所では時代の流れをいち早くキャッチし、生活者の「共有」に対する意識の変化に今後も注目していきたいと思います。
ルームクリップ株式会社 広報担当
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